山と海の書を、日本語の文法ルールに則って丁寧に再翻訳しています。YouTubeにて朗読会もしています。
山と海の書
ヴァニラーレと──の助けに感謝する。
おかげで──を越えてこの山まで辿りつけた。
この山は高く険しく、私が名付けるならば山頂の形にちなんで「とんがり帽子山」と呼ぶことにしようと思う。
ざっと観察してみたが、東側からロープと杭を使えば登れそうだ。
風を利用してフックをそこに──そして──。
──若者は誰も私とこの山に登ろうとしない。
まれに挑戦者が現れても、すぐに年老いた冒険者に追い返される。
「悪夢を征服する事はできぬ」
彼らは口を揃えてそう言うのだ。
先人らの失敗が若者の勇気を削ぎ、軟弱にさせた。
だが、私はまだ老いていない。
四肢も頭も十分に動く。
とんがり帽子山は、私の挑戦を待っている山の一つに過ぎない。
──いい知らせだ。
エルリックが私と一緒にこの山を登ってくれるそうだ。
私は一人ではないのだと信じていた!
──この山を舐めていた。
登ってから初めて分かったのだが、道と呼べるものがほとんど存在しない。
まるで、精巧に彫られた巨大な石のようだ。
家族が用意してくれた食料が山頂まで持つといいのだが‥‥‥。
──また怪我を負った。
足の傷が特にひどい。左手の二本の指も凍傷でやられた。
幸い右手の方は無事だったが‥‥‥。
完治には数ヶ月掛かるだろうが、今はまだ諦める時ではない。
──悪い知らせだ。
今日、エルリックが亡くなった。
山の寒さと険しさを耐えるには、彼は年を取りすぎていたのだ。
私はささやかではあるが彼を弔い、好きな酒と一緒にして埋めてやった。
もう私一人しかいない。
吹雪はまだ止まらない。
氷が山を閉ざしてしまう前に登らなければ‥‥‥。
──また足を折った。
軽い骨折で済んだのが幸いだ。
氷を纏う強風に吹き飛ばされたが、私はまだ生きている。
私は岩を握りしめ、必死の思いで崖を登り、なんとか山を下るための道を見つけた。
もしあの時、氷に打ち付けられたり岩の間に挟まっていたら危なかっただろう。
──また傷が開いた。
恐らく一年以上は山に登れないな‥‥‥。
──空が青い。
ここ数日は吹雪が止んでいる。
一羽のハヤブサが山頂よりも高い雲に飛び込んでいくのを見た。
私には届かない高さだ。
ハヤブサのように高い空を自由に飛べたら‥‥‥。
子供のおとぎ話に出てくる、谷で飛ぶ練習をする鷹の雛のように──