ノエルの好感度ストーリーを、日本語の文法ルールに則って読みやすく再翻訳しています。YouTubeにて朗読会もしています。
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Profile

一般的な騎士団メイドとは違って、ノエルには大きな夢がある。
千年に渡って西風騎士団に守られてきたこの都市で、いつか栄誉を象徴する鎧を身に纏うことを夢見ている。
そして、今はまだ厳しい騎士選抜に合格できないとしても、せめてもっと身近な距離で騎士道精神を学びたいと考えている。
すべての時間を訓練や勉強に費やし、困っている人々に寄り添う生活をノエルはとても気に入っている。
『任せてください! なんでも私にお任せを!』
これは彼女の口癖である。
助けが必要なとき、彼女の名を呼んでみるといい。
きっと喜んで手を差し伸べてくれるはずだ。
EpisodeⅠ
ノエルは人々から万能なメイドだと思われている。
そして、彼女に対する人々の評判にはある共通点がある。
それは「どこにでも現れる」という点である。
例えば、とあるパーティーの場で子供が食器棚に積まれている皿を取ろうとした時のこと。
皿は乱雑に積まれた状態で食器棚に仕舞ってあったため、子供が棚を開けた瞬間に崩れ落ちそうになった。
そんな危機的状況の中で、子供はノエルの名を必死に叫んだ。
すると、どこからともなくノエルが現れた。
彼女は流れるような動作で食器棚を床に倒し、中から皿を取り出して子供に渡した。
さらには、炙り焼き肉を食べたあとに、すぐ冷えたドリンクを飲むと胃腸が痛みますよと付け加え、棚と皿を綺麗さっぱり元に戻した。
人々にとって、どこにでも現れるノエルはとても不思議な存在だった。
とはいえ、彼女にとってメイドの仕事とは古くから伝わる伝説でもなければ神話でもなく、ただ自分のポリシーを守っているだけである。
「物事に大小はなく、そこにあるものが全てです」
ノエルは自分が特別だとは思っていない。
人より少しだけ多くのことを考えているだけである。
EpisodeⅡ
ノエルはとても頼りになる人物だが、時に度が過ぎることもある。
例えば、近くを通りかかったノエルにバーベキューの火の起こし方を聞くと、ノエルはすべての準備を一人で済ませてしまう。
手際よく火を起こし、焼き網の設置と食材の下ごしらえを済ませ、肉を焼いて試食をし、焼き方の注意をする。
そして最後に火の消し方を伝えてその場から去るのだ。
このような人助けであれば誰も悪い気はしないが、例外もある。
かつて、モンドで酒を使った商売をするために、スネージナヤから訪れた商人がいた。
彼はモンドの地に腰を落ち着かせたように見せかけ、モンドの酒造業に大打撃を与えるのが目的だった。
少しずつ故郷の酒を輸入し、市場を独占するという計画を立てていたのだ。
そして商人は自分の正体を隠すため、妻子を連れてビジネスを始めようとする一介の商人を装った。
しかし、この家族は異国から訪れた客人とみなされ、ノエルの手厚いおもてなしを受けることになる。
隅々までこだわり抜かれた彼女のおもてなしに、モンドに住む田舎者とは大違いだと商人は喜んだ。
だが、日が経つにつれて違和感を抱くようになった。
なぜかノエルは商人の行動を予測し、事前に用意を済ませておくようになっていたのだ。
毎日のように食卓に並ぶスネージナヤの料理は家族の大好物ばかりで、ぬいぐるみがないと眠れない娘の癖も見抜き、手作りのぬいぐるみをプレゼントされた。
商人からしてみれば、プライベートのすべてを把握されてしまっては、いつどのように計画を進めればいいのかわからない。
やがて、ノエルのニコニコとした表情を見るだけで寒気が走るようになり、何もかも見透かされているような感覚に陥った。
耐えきれなくなった商人は家族を連れてモンドを離れ、二度と顔を見せることはなかった。
肝心のノエルはというと、自分のおもてなしが力不足だったのではないかと落ち込み、反省する日々がしばらく続いた。
彼女はいつだって仕事に対して熱心なのだ。
EpisodeⅢ
ノエルはとても心強い存在であるが、それが裏目に出ることもある。
ある日、とある冒険者がドラゴンスパインで遭難したという話を聞きつけた彼女は、すぐさま荷物を整え、一人で山へ向かった。
その日は安全な道を見つけるのも困難なほど、険しい吹雪だった。
しかしノエルは怯まなかった。
彼女は半日かけてドラゴンスパインを捜索し、ついに洞窟の中で凍死寸前の冒険者を発見した。
この時点でノエル自身もひどく冷え込み、水筒の水も凍ってしまっていたが、飢えと寒さに耐えながら冒険者を背負って山を下りた。
その後、その冒険者は無事に助かったものの、逆にノエルが倒れてしまい、三日三晩高熱にうなされた。
幸いにもその後はすっかり回復し、大事には至らなかった。
しかし、こういった出来事は一度や二度ではないため、騎士団の面々はノエルのことがとにかく心配なのだ。
彼女が再び危険に巻き込まれないように、ジンはできるだけノエルが安全にこなせる仕事を作るしかなかった。
それでも危険に巻き込まれてしまった場合は、ガイアの出番である。
モンドで龍災が発生したときも、ノエルは災害の発生源を自分でなんとかしたいと意気込んでいた。
しかし、入念に練られたガイアの計画の下、龍災が解決されるまでたくさんの緊急任務に駆り出され、多忙な日々を送ることとなった。
EpisodeⅣ
ノエルの華奢な体には、とても強い力が秘められている。
それは彼女の揺るぎない信念だけを指している訳ではない。
ノエルは本当に力持ちなのである。
ある日リサが、実験器具を本棚の下にうっかり落としてしまい、それを拾うのに床を這いつくばるのは、レディとしていかがなものかと悩んでいた。
そんな時、偶然通りかかったノエルが颯爽と駆け寄り、本棚を持ち上げて落ちていた器具をリサに渡した。
この時、中にあった本は一冊たりとも崩れ落ちたりはしなかったそうだ。
またある時は、モンドの側門で荷物を積んだ荷車が炎スライムに襲われ、積み荷が火に包まれた。
偶然そこを通りかかったノエルは瞬時に状況を把握し、積み荷を荷車ごとシードル湖へ放り投げた。
そしてすぐさま自分も湖に飛びこみ、荷物をすべて回収したそうだ。
そんなノエルは昔、鍛冶屋のワーグナーに引退を考えさせるほどの絶望を与えたことがあった。
ワーグナーがいくつもの配合を試して作り上げた自慢の大剣を、ノエルは2、3回使っただけで鉄屑へと変えてしまったのだ。
ワーグナーはノエルの剣の扱いに問題があると疑ったが、彼女の戦い方を観察したところ、剣の強度不足だったということが判明した。
彼は職人としての名誉にかけて、ノエルのために重く頑丈な大剣を打ち、そこにノエル自身の岩元素で補強をかけ、ついに彼女の武器問題を解決した。
とはいえ、ノエルは強い力を持っているが、不必要にそれを披露するようなことはしない。
なぜなら、彼女は暴力で物事を解決することを嫌っているからである。
だが噂によれば、ノエルがオーダーメイドの武器を手に入れた日に、酔漢峡で酒に酔った宝盗団に襲われたらしい。
それが事実であれば、彼らがノエルの前に姿を現すことは二度とないだろう。
EpisodeⅤ
ノエルの前に立ち塞がる最大の敵。
それはバドルドー祭である。
バドルドー祭の開催期間中は、大聖堂前の広場にたくさんの長いテーブルが設置される。
その上には、様々な料理が所狭しと並べられる。
バドルドー祭とは本来、腕に自信のある住民たちが自発的に料理を振る舞うものだが、自分に厳しいノエルもその期間中は調理や配膳を担当する。
普段と比べてそこまで仕事量が多くなるわけではないものの、メイドとして並べられる料理の試食をしなければならない。
香ばしく焼きあがったムーンパイ。
サクサクのモンド風トンカツ。
チーズと肉でできたお肉つみつみ。
他にも揚げ物やバーベキュー、どれも祭りの定番メニューである。
酒を飲みながら祭りを楽しむ人々を見ているだけでノエルも楽しい気分になるが、少しふくよかになった自分のお腹に目を落とすと思わずため息が漏れる。
そのため、バドルドー祭が終わったあとの一カ月間。
ノエルは運動量を増やすため、西風騎士団の夜の見回りに参加するようにしている。
祭りは終わったとしても、彼女の戦いは終わらないのだ。
バラの警告
騎士団メイドには越えてはならない一線がある。
そのうちの一つは「騎士団メンバーの個人情報は厳格に保管しなければならない」ということ。
これは部外者に対してだけでなく、騎士団のメンバーに対しても同じである。
例えば、ジンの部屋には何かがあるだとか、アンバーのウサギ伯爵には何かが仕込まれているだとか、ガイアの眼帯はいったい何本あるのかや、クレーが爆弾を隠した場所はいったいいくつあるのかなど。
これらは全てトップシークレットである。
うっかり口を滑らさないように、ノエルは赤い布でたくさんのバラの造花を作った。
モンドでは、バラは口の堅さを象徴している。
そして彼女は自分への戒めとして、一枚のバラを自分の手甲に付けている。
機密漏洩はメイドにとって重大なミスであり、騎士を目指す人間が犯してはならないことである。
そのため、誰かの秘密を知りたい時は、ノエル以外の人物に話を聞いた方が早い。
彼女から何かを聞き出すというのは不可能だろう。
神の目
かつてのノエルは早く夢を実現したいと思っていた。
数年前に行われた騎士選抜では、最初から落選するとわかっていた七度目の選抜試験で落選し、彼女は意気消沈した。
苦労して学んできた礼儀や剣術、言葉遣いなどすべてが水の泡になってしまうのだろうか。
ノエルは西風騎士の一人一人の優れた部分をすべて記憶しているが、落選した彼女の努力を覚えている者は誰もいない。
ノエルは騎士になる夢を一度も諦めたことはなかったが、今回だけはいつものように立ち直ることができなかった。
これは彼女にとって非常に危険なサインである。
極寒の雪原で昼夜を問わず、休むことなく行動した後のような眠気が彼女を襲った。
そんな時、騎士の選抜を担当していた代理団長のジンがノエルの前に立った。
ノエルはどのような表情をすればいいのかわからず、反射的に騎士の敬礼をしていた。
この瞬間、彼女は自分がとんでもない行為をしてしまったことに気が付いた。
落選した者がこのような敬礼をしてしまえば、ジン団長にどう思われるか、それを想像するだけで不安になった。
ノエルが恥ずかしさのあまりその場から逃げ去ろうとした瞬間、ジンは足を揃え、彼女に同じ敬礼を返した。
ノエルは驚きつつも、笑みを浮かべた。
その表情は間抜け面だったかもしれないが、その笑顔は純粋そのものだった。
その日はノエルにとって忘れられない幸運な一日となった。
彼女は二つのものから認められたのだ。
一つはジンから。
そしてもう一つは神からである。
努力した者は必ず誰かに認められる。
その日から神の目を持つようになったノエルは、いつか自分も騎士の鎧を見に纏う日が来ると信じている。
そして彼女はより一層優しく、頼りになる人物となり、どこにでも現れる存在となった。
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