甘雨の好感度ストーリーを、日本語の文法ルールに則って読みやすく再翻訳しています。YouTubeにて朗読会もしています。
物語をゆっくり朗読
Profile

璃月で暮らす人々の多くは「玉京台」での生活に憧れを抱いているが、その規則を知る者はほとんどいない。
《璃月七星》は才能に溢れた組織であり、璃月の命綱を握っていることを人々は知っている。
だが、七星が全ての決断をどのように決定しているのか、それを容易に理解することはできない。
そして、七星が新しい年に公布する条例が、市場を大きく動かすことを人々は知っている。
しかし、その条例が複雑な議事録から抜き出され、どのようにして理解しやすい言葉に置き換えられているのかを知らない。
甘雨は「月海亭」の秘書であり、人々の目には入らないような仕事を担当している。
港町に住む人々は璃月での甘雨の地位を知っている。
だが、月海亭の秘書である彼女と、夜明けの埠頭で黙々と朝食を楽しむ彼女を結びつけるのは難しい事であった。
彼女は朝日が昇りきる前に再び玉京台にある月海亭へと戻り、契約を完遂するために業務を再開する。
──そう。
それは彼女が三千年前に《岩王帝君》と結んだ契約なのである。
EpisodeⅠ
甘雨は七星の中の誰か一人の専属秘書という訳ではなく、《璃月七星》全体の秘書である。
その温厚な見た目とは裏腹に、その内には確固たる意志が秘められている。
多くの仙人たちを率いる岩王帝君は、そのことを端から見抜いていた。
遥か昔、《璃月七星》が璃月の地に初めて現れたとき、甘雨は初代七星の秘書を務めることになった。
七星はそれから幾度となく世代交代を繰り返すことになったが、その傍らにはいつも甘雨の姿があった。
つまりそれほど長い年月のあいだ、璃月に散らばる膨大な書類の数々を、すべて甘雨が処理していたことになる。
彼女は仕事量が七倍、百倍、あるいは千倍になったとしても、最初の頃と変わらず業務に励んでいる。
仕事に対する責任感が薄れることは無いのだ。
甘雨をそうまでして突き動かしているのはいったい何なのか、かつてその理由を探ろうとした者もいたが、答えは分からなかったそうだ。
『私がしたことは、帝君の功績に比べたら足元にも及びません』
EpisodeⅡ
『私の仕事は帝君との契約に従い、璃月の数多くの命に最大限の幸せをもたらすことです』
多くの局面において、仕事をそつなくこなす甘雨は信頼に値する秘書である。
膨大とも言える仕事の数々を、彼女以上に手際よく処理できる者はきっといないだろう。
加えて、甘雨は璃月でのあらゆる物事に対して、独特で鋭い視点を持ち合わせている。
だが、甘雨が頼りになるのはあくまで「多くの局面」に限った話であり、全てにおいて頼りになるという訳ではない。
失敗が許されない大事な場面であればあるほど、彼女は失敗してしまうのだ。
そのような状況に直面した場合、甘雨は少しの失敗も許されないと力が入りすぎ、余計な緊張をしてしまう。
その結果、想定外の失敗を招いてしまうことになる。
例えば、璃月の一年で最も重要な儀式である「七星迎仙儀式」での出来事。
甘雨はある年に行われた「七星迎仙儀式」に3分遅刻し、観衆の視線が集まる中、人混みをかき分けながら式場に登場したことがあった。
なにか言い訳をするわけでもなく、顔を真っ赤にしながら口ごもり、ただただ心の中で何千回と《岩王帝君》に謝罪した。
甘雨と仲のいい同僚はこのような失敗は彼女らしくないと思い、なにか裏があるのではないかと考えた。
そして彼女と顔見知り程度の同僚たちは、帝君がそのことを特に気にしていない様子だったのを見て、自分たちもそうすることにした。
プライベートでも甘雨と付き合いがある者は、彼女を心配して仕事量の調整や、休暇を取るように提案した。
しかし、甘雨が首を縦に振ることはなかった。
『今年の式典に着ていく衣装の飾りをどれにするか悩んでいたら、2時間も経っていました‥‥‥』
そんな理由で大事な儀式に遅刻したなんて、口が裂けても誰かに話したりはしないだろう。
EpisodeⅢ
千年はどれくらい長いのか。
それは荻花州に咲き誇っていた瑠璃百合が洪水によって絶滅するほど長く、賑やかだった帰離原が戦で寂れて廃墟と化すほど長い。
千年はどれくらい短いのか。
それは甘雨にとって瞬く間のこと。
常人には想像もできないほどの長い年月の中、彼女は玉京台に座り続け、あらゆる書類を処理してきた。
楼門の建設をすべて記録し、産業の繁栄をすべて目にしてきた。
甘雨は時間の流れを客観的に捉えていた。
時間とは白紙の上で絶え間なく更新され続ける数字であり、様々な色を使って分類する必要があるテーブルだと認識していた。
時間では甘雨の心を変えることができない。
彼女はずっと「人」と「仙獣」との間で揺れ動いている。
麒麟である彼女には、人の世界で起きる無数の争いを理解することはできない。
しかしその一方で、その身に流れる人の血が、甘雨に人間社会へ溶け込むようにと希望を囁くのである。
EpisodeⅣ
甘雨はひとたび仕事から離れると、普段とは違った一面を見せる。
彼女には昼寝の習慣がある。
まるで体内に時計でも埋め込まれているかのように、時間が来ると場所や状況に関わらず体を丸めて眠ってしまうのだ。
たとえヒルチャールが周りを囲みながら騒がしく踊っていたとしても、彼女が目を覚ますことはない。
この不思議な習慣については、当初は七星や身内同士の笑い話でしかなかった。
しかし、このことが後にある事件へと発展してしまう。
ある日《天璇》に同伴して外で昼食を済ませたあと、満腹になった甘雨が荷車に積まれた干し草の上で突然眠り始めたのだ。
そして誰にも気付かれないまま荻花州まで運ばれてしまい、荷下ろしのタイミングで頭部を地面に叩きつけられ、ようやく目を覚ましたのである。
元の場所へ戻るのに3時間も掛かったという。
《天璇》は甘雨が何も言わずに姿を消すような人物ではないと理解していたため、何かの事件に巻き込まれたのではないかと考え、失踪届けを出す直前だったそうだ。
その後、「昼寝は安全な場所で行うこと」という忠告を受けた甘雨は、落ち込みながらこう言った。
『璃月はどこも安全な場所ではないのですか‥‥‥?』
甘雨の認識が世間の人々と大きくズレているのは、彼女の中に仙獣の血が流れているからかもしれない。
EpisodeⅤ
甘雨に仙獣《麒麟》の血が流れていることは、璃月港ではあまり知らていない事実である。
緋雲の丘を通るとき、彼女を初めて見る者はいつも、頭部から伸びている物体は何かと尋ねる。
しかしその質問に対して、彼女は家に代々伝わる髪飾りだと答えている。
『もしみんなに本当のことを知られてしまったら、きっと距離を置かれてしまいます‥‥‥』
これまで璃月の人々と親しくなったことは一度もないが、心の距離を置かれてしまうことは彼女にとって悲しいことなのである。
また、それとは別にもうひとつ大きな理由がある。
これが「麒麟の角」であるということがバレてしまえば、好奇心から角を触ってくる人が出てくるかもしれない。
心理面や生理面に関わらず、角にもちゃんと感覚があるのだ。
その他にも甘雨が用心深く隠している秘密がある。
それは体型の維持である。
麒麟は菜食主義者であるが、璃月の料理は天下にその名を轟かせるほどの美食が揃っている。
たとえそれが野菜料理であったとしても、溢れんばかりの食欲を抑えるというのは甘雨にとって非常に困難なことなのである。
そのため、港町での生活に慣れた甘雨は、己の体型と体重を常に意識している。
気が付けば美味しい匂いに吸い寄せられていたこともあったが、食欲をコントロールするというのは、ドラゴンスパインで烈焔花を見つけるのと同じくらい困難なことであると考えている。
しかし、それがどれほど難しいことであったとしても、甘雨は努力を怠ったりはしない。
彼女は数千年前の魔神戦争時代、現在とは違って毬のように丸々とした体型だったのだ。
その体型ゆえに、巨獣に飲み込まれた際に巨獣の喉を詰まらせ、呼吸をできないようにした上で降伏させたという過去がある。
その恥ずべき過去を繰り返さないためにも、甘雨はなにがなんでも今の体型を維持しようと強く心に誓っている。
玉京台植物誌
──玉京台植物誌。
それは玉京台でよく見られる植物の特徴や、習性を記した手記。
そして秀麗な字で書かれた文字は、甘雨の手書きによるものである。
手記は明確に区分けされており、内容は単純かつ明快で複雑で難しい内容は分かりやすく要約されている。
例えば、瑠璃百合の保護についてや、霓裳花の移植についてなどが書かれている。
読み物としても専門書としても、正式に出版してもいい程の内容が記されている手記である。
最初のページを何枚かめくった時、多くの人はそのような感想を抱くだろう。
そして後ろのページからめくった時もまた、多くの人がその内容に驚かされることだろう。
なぜなら、後ろの数ページはその大部分が、黒く塗りつぶされているのである。
よく目を凝らして見ることで、そこに野菜の育て方が記されていることを判別することができる。
『自分で野菜を育てられるようになってしまうと、食欲をコントロールするのがもっと大変になります‥‥‥!』
甘雨は拳を強く握りしめ、苦労してまとめ上げた成果を無かったことにし、己の欲望を抑えたのである。
以前、お腹を空かせた甘雨が花の水やりをしようとした時、霓裳花へ頭から突っ込んでしまったことがあった。
その時、もしこれがスイートフラワーだったらと妄想することで、自分の食欲を紛らわせたという。
そしてそのまま昼寝の時間へ突入し、山のように積まれたスイートフラワーに囲まれながら幸せな時間を過ごす夢を見たのだった。
神の目
麒麟は仙獣の中の仁獣であり、露を飲み稲を食す。
生きた虫を踏まず、生きた草を折らず、群れず、旅をせず、罠に入らず、穏やかで寛大で、温厚で優雅な一族である。
過去に海の中で巨獣が暴れまわり大地が脅かされたとき、平穏という言葉が日常から消え去った。
三千年前、甘雨は岩神モラクスの召喚に応え、魔神戦争で彼に力を貸した。
その後、戦争が終結しても彼女は璃月に残り、人々がより良い国を作っていくための手伝いを始めたのである。
初代の璃月七星が補佐を必要としたとき、甘雨はその任を引き受けて七星の秘書となった。
そして彼女がその決断を下した瞬間、腰元に神の目が現れたのである。
それは彼女に卓越した肉体と、世界と共鳴するための力を与えた。
だが、その時の甘雨はすでに平和と安堵の心で満たされていた。
そのため、どれだけ強くなったとしても神の目を使うことはない。
この力は、璃月を守るための最後の切り札であると考えていたのだ。
仙獣と人間の混血として、彼女はこの二つの種族の架け橋となることを選んだ。
そして神の目は、その新たな責務への証明でもある。
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