フィッシュルの好感度ストーリーを、日本語の文法ルールに則って読みやすく再翻訳しています。YouTubeにて朗読会もしています。
物語をゆっくり朗読
Profile

フィッシュルは異世界「幽夜浄土」より召喚された「断罪の皇女」である。
彼女は言葉を話すことができる鴉の眷属「オズ」と共に、
「運命の因果が織り成す糸を観察している」
理由に関しては彼女自身もうまく説明ができず、オズは何も語ろうとしないため謎に包まれている。
フィッシュルは現在、冒険者協会の調査員として世界の行く末を見守っている。
EpisodeⅠ
調査員としての一番の功労者はオズである。
『お嬢様、私に風魔龍の動向を探らせるのはもうやめて頂けませんか? 私ではあやつの前菜にもなりませんよ』
『フン、この断罪の皇女の眷属になったんだから、わたくしのために目と命を捧げるくらい当然のことでしょ?』
彼女はオズの目に映る風景を見ることができる。
本気を出せば鴉となって翼を広げ、大地を見下ろすことだって可能だ。
望風山地の生態も、奔狼領の全容も、オズの目を借りれば全てが白日の下に晒される。
フィッシュル自身の努力は僅かながらも、この能力と不思議なキャラが受け、冒険者協会の新星として皆に気に入られている。
なお、14歳という若さで冒険者協会に加入したのは、彼女の両親が紹介したからである。
それにしてもフィッシュルが断罪の皇女なら、彼女の両親は断罪の皇帝になるのだろうか……。
EpisodeⅡ
冒険者たちの間で『フィッシュル辞書 』という本が出回っている。
これは、彼女の意味不明な言葉を翻訳してくれる素晴らしい本である。
例えば──
「時の狭間に靡く過去の風が、因果の渦中で忘れ去られし廃塔に旋風を響かせる」
これは「風龍廃墟」を指している。
「断罪の名の元に集いし従者たちよ。己が望みのままに、偉大なる皇女の知恵を授かる覚悟をしなさい」
これは「調査をするから情報共有をしよう」という意味だ。
「歌え! 皇女の祝福を貪る従者たちよ! 猛虎の如く戦場へ赴きなさい!」
これは「調査任務を完了したから報告に行こう」と意味する。
そして──
「全てはこの漆黒の黙示録に記された……」
これは「冒険者たちの報告を元に冒険日誌を書いた」という意味である。
このフィッシュル辞書は決め事が書かれている訳ではない。
彼女のことをよく知る者はその言葉に耳を傾け、意味を理解しようと努力する。
何故なら彼女のことを尊重し、認めているからである。
『フン、やはりあなたは分かってくれるのね。さすが私と運命で繋がっているだけのことはあるわ』
そして、そのまま彼女を褒める言葉を口にすると、
『皇女は賞賛の言葉を惜しまないからね? もう少し褒めて……コホン、誤解しないで。これは新世界の礎になるものだから』
そう言いながら、照れる彼女の姿を見れるかもしれない。
EpisodeⅢ
フィッシュルとオズの関係は、ただの友人や主従などではなく、魂と運命を共にする一種の運命共同体である。
彼女たちの出会いは「フィッシュル皇女物語・第一巻『末日解体概要』」に記されている。
◇◇◇
孤独な皇女は運命に従い断罪の聖裁を下すため、
だが、それを拒む黄昏の王族は彼女を「否定」した。
──抗えない絶望の中、彼らの否定は徹底的なものだった。
フィッシュルは幽夜浄土の主としての使命だけでなく、幽夜浄土を守る責務、そして13000年間続いている我が血統に誇りを持っていた。
だが、黄昏の王族は彼女の全てを否定した。
そして、人間としての矜持をも否定してしまった彼らは、凶悪で醜い獣へと成り下がった。
フィッシュルは黄昏の宮殿で獣たちにその身を引き裂かれ、高潔な血が古の紋章の上に落ちた。
その瞬間、絶え間なく続く黄昏の空に夜が訪れるかのように、漆黒の翼が獣たちから彼女を守った。
血の盟約に従い、鴉の王オズヴァルド・ラフナヴィネスは彼女に永遠の忠誠を誓った。
EpisodeⅣ
──こんな話がある。
昔々、あるところに一人の少女がいた。
少女は幼い頃から図書館で本を読み、本の中の世界を冒険していた。
幽夜浄土の主として断罪の聖裁を下す皇女となり、漆黒の鴉と運命を共にする──
そんな冒険だ。
少女の両親は冒険者だった。
『──、今日は何の本を読んだんだい?』
珍しく冒険から戻った父と母は少女にそう聞いた。
少女は嬉しそうに自分の好きな本の話を聞かせてあげた。
『フィッシュル・ヴォン・ルフシュロス・ナフィードット。お前は断罪の皇女、俺たちの自慢の娘だ。何があっても崇高な夢を諦めてはならないよ』
『いい話ね。──がこの名前を気に入ったのなら、これからは「フィッシュル」と呼びましょう』
そう言いながら、父と母は笑いながら少女の頭をなでた。
両親の優しくて暖かい言葉は、幼い少女の心に温もりを与えてくれた。
しかし、多忙な両親とは一緒にいられる時間がそう長くない。
本と妄想に夢中になりすぎていたせいで、少女は周りと馴染むことが出来なくなっていた。
『わたくしはフィッシュル。すごい皇女だからパパとママもそう言ってくれたわ』
少女は孤独の寂しさを紛らわせるため、いつも自分にそう言い聞かせている。
『何があっても崇高な夢を諦めてはならない……だってこれは皇女である私に対しての試練なんだから』
EpisodeⅤ
「フィッシュル皇女物語」シリーズの世界が、とある事象の影響によって滅びたのと同時に物語は終焉を迎えた。
妄想に入り浸っていたあの少女も時の流れと共に成長し、14歳の誕生日を迎えた。
彼女のことを理解しようとしない周りの子供たちは、いつものように少女をからかっていた。
だが、これは皇女に対する小さな試練に過ぎない。
パパとママなら、きっとわかってくれるはずだ。
──皇女は何があっても崇高な夢を諦めてはならない。
しかし、冒険から戻った両親に掛けられた言葉は、彼女の崇高な夢を破壊するに等しいものだった。
『──、あなたはもう14歳よ? いい加減、妄想からは卒業しなさい』
聞きなれている両親の声が、まるで凍てつく氷のように少女の心を打ち砕いた。
その日の夜、図書館に閉じこもって泣いていた彼女は妙な視線を感じ、この世には存在しないはずの漆黒の鴉と出会った。
その後の両親とのやり取りはまた別の話である。
なにせフィッシュルはこの話があまり好きではない。
何故なら、その話を思い出すたびに言いようのない孤独を感じるから。
この話はいつか誰かの手によって書かれるかもしれない。
けれど、それはあくまで──の話。
彼女の名はフィッシュル。
幽夜浄土の主にして聖裁の雷を下す者。
彼女は過去の自分を捨て、断罪の皇女フィッシュルとして生まれ変わったのだ。
孤独だった少女にも今ではたくさんの仲間がいる。
オズだけではなく、自分と同じく異世界から来たという旅人とも巡り合えたのだから──
フィッシュル皇女物語「極夜幻想メドレー」
『フィッシュル皇女物語』シリーズのおまけとして、発行された設定集。
発行部数が非常に少なく、原作ファンの間ではどれだけモラを積んでも入手できない希少品とされている。
この作品の舞台はとても美しいものだが、世界観の設定は非常にダークである。
◇◇◇
この世界に存在するすべての生命は、不可解な事象の発生により破滅へと向かっていく。
そして、この世界の行きつく先──
それが皇女の治める地、すべての幻想に終焉をもたらす「幽夜浄土」となる。
これが世界の理。
無数に存在する世界の運命であり、命ある者に定められた運命でもある。
皇女の使命は、夢を食する「世界」という獣を射抜くこと。
彼女は終焉を迎える数多の世界を渡り歩き、断罪の雷で聖裁を下し続ける。
失った世界の記憶を魂に刻み、鴉の眷属と共に終わりなき戦いに身を投じる──
……なので。
この世界で冒険者協会の調査員を務める、というのも原作を忠実にしているし、皇女の世界巡礼エピソードに含まれるのだ。
けれど、彼女はいずれわかってくるだろう。
生きとし生ける者の命。
そして、1分1秒でさえも大事にしなければならないことを。
だってこれは断罪の皇女の極夜幻想メドレー。
その物語の一部でしかないのだから──
神の目
果たして、オズはフィッシュルの潜在意識にしか存在しない「空想の友達」なのだろうか?
この件については皇族の宝器である、深い色をした「
……つまり、フィッシュルの神の目から説明しなければならない。
あの日──
少女の願いが認められた時、オズと神の目が同時に彼女の前に現れた。
その日の晩。
彼女の両親とオズは何故か意気投合していた。
『幽夜の皇帝、並びに皇后様。私の出過ぎた真似をお許しください。ですが、この豆は実に美味しいです』
『好きならいっぱい食べてね? ──にできた初めてのお友達なんだから。それにしても本当に珍しいお友達ね』
『な、なにおう!? 皇女のわたくしに普通の友達なんて要らないから!』
結果から見れば、彼女の両親もオズの姿を見ることができ、オズを初めての友達だと思っているようだ。
そして──
「異世界からの来訪者」
「精霊風の変わった非常食」
「不運に見舞われた冒険者」
彼らと皇女が友達になるのはその後の話である。
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