ベネットの好感度ストーリーを、日本語の文法ルールに則って読みやすく再翻訳しています。YouTubeにて朗読会もしています。
物語をゆっくり朗読
Profile

ベニー冒険団の存在は、冒険者協会モンド支部にあるひとつの特例である。
そもそも冒険団というのは、互いを支え合い、危険を回避するために設けられたシステムであり、通常は3から4名のメンバーで構成される。
しかし、ベネットが団長を務めるベニー冒険団は、団員が団長ただ一人という状態が長く続いている。
団員が脱退していく最大の要因、それは団長ベネットの「不運体質」にある。
とはいえ、心躍る冒険に対して常に情熱が溢れているベネットは、団員が一人もいないことを寂しいとは思っていない。
いや、もしかしたら、心の片隅で一度くらいは思うことがあったかもしれない。
EpisodeⅠ
「ベニー冒険団」最初の被害者は、冒険者ジャックである。
あの日、彼らは宝物まであと僅かという距離で、百年に一度発生するかどうかの「岩元素乱流」に巻き込まれたのだ。
そして一行は、突如現れた深い溝によって宝物までの道を隔たれた。
『近いのに遠い‥‥‥まるで恋みたいだ』
ジャックはこの一件で失恋でもしたかのように、彼の冒険者人生に大きな傷跡を残した。
そして、団員ロイスは秘境の探索中に「よいしょっ!」という声を聞いた瞬間、盛大に鳴り響く爆発音の中で意識を失った。
その後、犯人のクレーは7日間に渡り反省室に閉じ込められたそうだ。
彼女の話によると、爆弾を投げ込んだ理由は、その秘境が大きいウサギさんのお家だと思ったかららしい。
ベネット団長の不運はそれだけでは終わらない。
ヘッケラーはベニー冒険団に加入してから、一週間ものあいだ体調を崩したのだ。
医者からは食中毒だと言われたそうだが、本人は団長の不運体質が原因だと頑なに否定したという。
『あいつらはすぐ戻ってくるって言ってたんだ‥‥‥。だから冒険団の登録から消さないでくれ‥‥‥』
ベネットの頼みを聞いたキャサリンはため息を吐きつつも、団員たちは既に脱退したことを告げないことにした。
EpisodeⅡ
かつて、踏破不可能と言われた秘境があった。
そんな中、とある年老いた冒険者がその秘境に足を踏み入れた。
燃え盛る烈火によって皮膚は焼かれ、轟く雷鳴に鼓膜を刺され、荒れ狂う狂風が魂を引き裂くかのような場所だった。
だが、この地獄のような秘境の果てで彼を待っていたのは、なんと小さな赤子だったのだ。
老人は自分こそが、この「絶境」を初めて踏破した冒険者だと思っていた。
だからこそ、彼は目の前の存在が理解できなかった。
「この赤ん坊は‥‥‥世界に捨てられた子なのだろうな」
ふと頭によぎったその考えが、きっと真実なのだろうと老人は信じた。
伝説の武器や財宝は手に入らなかったものの、彼の表情に落胆の色が浮かぶことはなかった。
なぜなら、目の前で必死に生きようとしているこの赤子こそが、彼にとっては宝物だったからだ。
──この冒険にはきっと意味があるのだろう。
老人はそう考えながら、小さな赤子を抱き上げた。
たとえそれが、世界の意思に背くことだったとしても。
EpisodeⅢ
老人はあの冒険を誰かに話す前に、絶境から救った子を残してこの世を去った。
彼は亡くなる直前「意思」、「冒険」、「終点の宝物」という言葉を残した。
冒険者協会モンド支部には、まだ妻子のいないベテラン冒険者が数名いる。
彼らは例の子供をベネットと呼び、我が子のように育てた。
そして幼い頃から物分かりのよかったベネットも、彼らをオヤジと呼んでいる。
『オヤジ、入れ歯が茶碗に入ってたよ』
『オヤジ? なんでまだそれ着てるんだ。オレが買ったシャツは?』
『雨の日はオレから離れた方がいいぞオヤジ。雷が落ちてくるからな!』
ベネットは冒険以外の時間を、すべてオヤジたちの世話に使っている。
『あいつら良い宝を拾ったな!』
モンド支部長のサイリュスは、笑いながらベネットの背中を叩いた。
ベネットは日頃から、自分は不運でも愛する人たちが幸せでいられるように頑張ろうと考えている。
そして彼は今日も「幸運」を象徴する宝物を探している。
EpisodeⅣ
フィッシュルの眷属である鴉のオズは、ベネットのことを「世界で一番頑強な少年」と呼ぶ。
彼の体にある傷跡を見れば、ベネットが今までどれほどの不運を経験してきたのかがわかる。
怪物の襲撃に遺跡の崩壊、崖からの転落など。
彼が経験した不運の数は計り知れない。
だが、どのような状況に陥ったとしても、「不運経験」が豊富なベネットはすぐに対応策を思いつく。
大聖堂の祈祷牧師であるバーバラも、
そして、不運が招いたもう一つの贈り物は、病的なまでの戦闘方法だった。
「あの動き‥‥‥痛みを感じていないのか?」
彼の戦い方を見た騎士団のファルカはそう疑問を持った。
とはいえ、ベネットは決して痛みを感じていない訳ではなく、体がとうに痛みに慣れてしまい、日常の一部となっている。
どのような痛みであっても、ベネットにとってはかすり傷みたいなものなのだ。
だからこそ、人体の限界を超えた彼の戦い方や何物をも恐れない根性は、冒険者ベネットの魅力のひとつとなったのだ。
EpisodeⅤ
──死ぬっていったい何だろう?
いつも死と隣り合わせのベネットにとって、それは考えずにはいられないことだった。
自分を拾った冒険者のオヤジが亡くなった後も、その伝説が語り継がれていることを彼は知っている。
妻子のいない冒険者の葬儀に涙はなく、旧友たちの乾杯する音だけが響き渡ることを彼は知っている。
冒険者としての最高の終わり方とは、追い求めた道の先でその身を捧げ、風神の手によって故郷へと魂を運んでもらうことだとベネットは知っている。
彼はかつて死を恐れていた。
だが、幾度となく考えた結果、冒険者にとっての死とは、むしろ幸運なことかもしれないと考えるようになった。
──ま、不運な俺には関係ないことだけどな!
そしてベネットはネガティブな考えをやめた。
『行こう! 宝物を探しに!』
絆創膏
ベネットは骨折や出血の多い怪我をしたとき、大聖堂でバーバラに治療をしてもらう。
『また俺だ‥‥‥わりぃな』
そう言いながら彼は頭を掻く。
『かすり傷もちゃんと手当てしてね』
バーバラは呆れながら絆創膏を渡す。
ベネットにとって、このさりげない優しさはまるで宝物のようだった。
彼は勲章を付けるかのように絆創膏を傷口に貼り、バーバラにお礼を言った。
ベネットが冒険をするときは、いつもたくさんの絆創膏がポケットに入っている。
オヤジたちやバーバラから貰ったもの、キャサリンから貰ったものや、怪我をしたときに出会った冒険者から貰ったもの。
それらはベネットにとっての幸運に変わる。
『オレにはみんながいるから、不運も大したことないな!』
神の目
ベネットの冒険への情熱は誰にも止められない。
彼はオヤジたちのように熱意を持って探検を続け、未知に挑戦しながら冒険に人生をかけている。
だが、あの時のベネットは本当の危機に直面していた。
オヤジたちが若い頃に経験したような絶体絶命の危機。
『この出血量は‥‥‥ヤバいぞ‥‥‥!』
しかし、彼が足を止めることはなかった。
なんの収穫もなしに帰るわけにはいかないと、そう考えていたのだ。
この時、ベネットは過去に経験した全ての不幸が、この瞬間を乗り越えるために与えられた、試練だったのではないかと思えた。
だが、この地獄のような冒険の果てに待っていたものは、何もなかった。
『収穫なしも冒険の一部‥‥‥だからさ‥‥‥き、気にすんな‥‥‥』
それまで堪えてきた緊張がゆるんだ瞬間、傷だらけのベネットはその場に倒れた。
目を覚ましたとき、傷口が不思議な炎に焼かれている感覚に気付き、出血は止まり痛みも感じなくなっていた。
そして、彼の手のひらで熱を放つ温かい宝珠が、ベネットの心拍に合わせてゆっくりと脈打っていた。
それは世界の慈悲や運命の
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